潜入レポ!楽天、ヤフー登壇「模倣品購入の実態と対策」
模倣品に騙されないようにするために開催!
先日、特許庁の1階ロビー内でパネルディスカッションが開催された。そのテーマが『「あなたと社会に、ニセモノは悪です」~インターネットショッピングを利用される方必見!ニセモノ(模倣品・海賊版)流通トレンドとその対策~』である。
このパネルディスカッションには、3名のパネリストとモデレーターで進められた。パネリストは、一般社団法人ユニオン・デ・ファブリカン 専務理事・事務局長の堤隆幸氏、ヤフー株式会社 社長室コーポレート政策企画本部の上山達也氏、楽天株式会社 執行役員の河野奈保氏である。モデレーターは、特許庁 広報室長の草野顕子氏だ。
現在では、インターネットショッピングをする人が増えてきている。品揃いが豊富であり、インターネットで注文をすると自宅に届けてくれる、それがインターネットショッピングの大きな魅力だ。だが、利用者が増加する一方、模倣品や海賊版も増えてきている。
2014年に内閣府が実施した知的財産の世論調査によると、「どんな理由があっても模倣品を購入すべきではない」と回答する消費者が増加する一方、「模倣品の購入は仕方が無い」と回答する消費者も4割を超えていることも事実である。特許庁は、「模倣品の購入は仕方が無い」と消費者に思わせないために、模倣品の撲滅運動に力を入れている。今回のパネルディスカッションでは、模倣品に騙されないように見分け方や対策を消費者に知ってもらうために開催された。
堤氏が語る、模倣品の過去と現在!
草野氏:模倣品や海賊版のトレンドについて教えてください。
堤氏:ルイ・ヴィトンやグッチなどの模倣品が広がっていることは、多くの人に知られていると思います。これらは、未だに減っておらず、根強く残っています。また、最近は、インターネットの口コミで模倣品が広がっていることが事実です。そのため、模倣品対策に追いついていないことが現状です。
模倣品は海外から送られてくることが多くなってきました。以前は、税関や海という壁もあり、模倣品が入ってくることはありませんでしたが、だんだん崩れつつあります。最近の模造品は、スマートフォンのバッテリーや健康被害を起こすような物が増えてきているので、私達は拡大しないように意識を高く持っています。
草野氏:インターネットショッピングに新たなビジネスモデル「フリーマーケット」での、模倣品の扱いは今後どうなっていくと思いますか。
堤氏:最近、フリーマーケットのアプリが増えてきていますが、「それとショッピングモールの区別が難しい」という声もあると思います。ショッピングモールは価格が設定されており、店舗の方とのやり取りであるBtoC、フリーマーケットは価格が設定されておらず、基本的にCtoCです。新しいビジネスモデルを立ち上げる際に、「どこまで考えるか」が問題です。私からすると、「出品前に商品をサイト側の人が検査をして欲しい」と思いますが、もう自由出品の状況でソフトウェアやアプリケーションを作ってしまって、後々言うとそこだけ変えることも難しい状況になってしまいます。
数字に置き換えると「40%以上が模倣品」と出ていて、そうするとほぼ模倣品ということになります。弊社では、毎年このような数字を出しておりまして、Yahoo!ショッピングや楽天は「1%以下」と出ています。1%程度は、やむを得ない数字であるため、模倣品が非常に少ない状態です。今後は、フリーマーケットのアプリと話し合いを重ね、対策を取ってもらうなどの話し合いを随時やっていきます。
草野氏:権利者側として、ヤフーさんと楽天さんの動きはどう映りますか。
堤氏:模倣品の出始めの1990年代は危機的状況で、今回のような話ができるなんて思えませんでした。ヤフーさんと楽天さん、DeNAさんが非常に頑張って頂いて、権利者側からすると「こんな対策もできるのか」と驚かされます。
本人対策や「自主パトロール」という言葉が生まれてモニタリングの対策と、当初我々にはそういうことは全く思い付かない発想です。そのような新しい発想を生むためにも、今後もまだ模倣品について詳しく理解して頂けていない方々と話し合いをしていきたいです。ただ、話し合いは簡単にできることではなく、「話をしてください」と言っても受け入れてくれないことも多く、話し合いの段階まで行くことができないことが現状です。今後は頑張って話し合いの段階まで持っていって、せめて怒鳴り合いをしなければ、現状は変わりません。
草野氏:今後はどのように対策をしていくか。
堤氏:「模倣品・海賊版を排除していくことが社会にとっての利益」を共通言語とし、考えを一致させながら話し合いを進めていきたいです。話し合いの際に、言い合いになるのではなく、お互いの立場を守りながら常に「消費者保護」「顧客の保護」を頭に入れておくことが大切です。
草野氏:消費者に意識して欲しい点を教えてください。
堤氏:模倣品についてのアンケートを回答する際には「模倣品は許さない」に丸を付けてください。アンケートの数値は意外と恐ろしくて、「4割の人が良いって言っているのだから良いのではないか」となってしまいます。私自身も模倣品を購入したことがあり、誰も助けてくれませんでした。そうならないためにも、消費者1人1人が意識を持って、インターネットショッピングは売っている人の顔が見えない分、慎重に購入して欲しいです。例えば、商品購入の確認メールを注意深く見ると、言葉遣いがおかしいなどと見分けることができます。購入するお店の電話番号や住所等が合っているかなどを確認しながら、まず自分が模倣品を買わされないように気をつけて頂きたいです。
上山氏が語る、ニセモノを売る悪い人!
草野氏:模倣品や海賊版のトレンドについて教えてください。
上山氏:以前は「著名ブランドのファッションアイテムがニセモノとして多く流出している」という話をよく耳にしましたが、最近では日用品にまでニセモノが出るようになってきました。最近では車のエアバッグにもニセモノが含まれており、これは非常に危険です。衝突してもエアバッグが開かないとなると、命に関わってきます。
このように、模倣品は直接命や健康に関わるものになってきており、さらに手口が巧妙になってきています。それが、今後解決しなければいけない課題として強く認識しています。今後もYahoo!ショッピングの店舗や消費者と情報交換をしながら、対策していきたいと思います。
草野氏:ビジネス立ち上げ当初の試行錯誤を聞かせてください。
上山氏:ヤフオク!のサービスを開始した時は、無料で提供していました。誰でも登録でき、Yahoo!に登録してIDを取り、売りたい商品の写真を載せるだけで出品ができました。弊社が知っている情報は、売り手のメールアドレスくらいでした。悪用をしようと考える人にとっては、これほど便利なものはありません。自分の名前を知らせることなく、商品を出品することができてしまいます。
その後、サービスを有料化し、その際に売り手の名前や住所、クレジットカードや銀行の口座番号を頂くようになりました。そのときに「これだけ自分の情報を握られていたら、悪いことはしない、ニセモノを売る人はいない」と思っていました。しかし、悪い人はそのような壁を楽々と乗り越え、偽名や儀住所、協力者の口座番号などあらゆる手段を使ってきました。
そのため、さらなる対策で両者の本人確認を追跡するようになりました。実際に、「その住所に住んでいるか」など確認した上で利用してもらいます。このようにコストを徐々に上げていく作戦で、悪い人を排除していきます。
一方、私達の目でニセモノと判断をすれば、排除してしまう対策もあります。私達の目で判断できない場合は、プロの方に見てもらい、「ニセモノ」と分かった時点で排除していきます。
そういう取り組みを経て、堤さんの話通り「模倣品1%以下」という数字となりました。また、フリマアプリと当初ヤフオク!の形式が似ていて、フリマアプリの運営の方も試行錯誤はすると思いますが、模倣品対策を順次強化してもらいたいということが私達の願いです。
草野氏:今後はどのように対策をしていくか。
上山氏:私達のサービスを利用するユーザーがいるからこそ、社会に認められ、評価されていくと思います。ニセモノを売る人を、共通言語を持ってユーザーと共に排除をしていきたいです。
世界では権利者とプラットフォームを経営している会社で対立し合って、「ニセモノが販売されることは会社がしっかり監視しないことが原因だ」という風になってしまっています。日本では、インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)の取り組みがしっかりしているため、対立することは滅多に無いと思います。日本と同様に世界でも、模造品の対策を行くと悩んでいる方々を救うことができると思います。それこそ、「日本の心が世界を変える」になっていくはずです。
草野氏:消費者に意識して欲しい点を教えてください。
上山氏:「注意深く」や「良い話は無いですよ」などと言っていると暗い社会になってしまいそうで、あまり好きでは無いのですが、模倣品を購入しないためには必要なことです。
最も大切なことは「正しい情報は何か」ということであり、自分の規律を守りながら行動していくことが模倣品を購入しないことに繋がると思います。また、模倣品には一切手を出さないようにして、万が一模倣品を購入してしまった場合は、お店や権利者に情報を提供して頂きたいです。消費者から情報を提供していくことも大切なことだと思います。
河野氏が語る、消費者に声を上げて欲しい!
草野氏:模倣品や海賊版のトレンドについて教えてください。
河野氏:弊社は、専門チームを設けて実際に商品をモニタリングしながら「ニセモノは無いか」などを確認しています。最近、模倣品で増えているのは、日用品です。また、人気ブロガーが使用していたもの、SNSで広がっていたもので「いいな」と思った商品があると、女性はそういうものに惹かれつつあります。それを狙って、模倣品が多発している場合もあります。
特に海外のブランドは「直接手に取らないと本物が分からない」という風に見分けるまでに時間がかかります。そのようなユーザーの声を大切にし、模倣品撲滅運動に力を入れていきたいと思います。
草野氏:ビジネス立ち上げ当初の試行錯誤を聞かせてください。
河野氏:模倣品対策の取り組みに関しては、終わりがありません。対策をすればする程、新しい手口が出てきてしまいます。重要なことは、企業が「本当に取り組むか」ということです。
楽天は、プラットフォームであり、店舗側に全てを任せていたことも事実です。そこに問題があると思い、ここ数年、店舗をパートナーと思うようにし、店舗だけに任せるのではなく、楽天でも模倣品などを厳しく監視するようになりました。急に変更をしたことで店舗側から厳しい声を頂いたものの、とにかく実態を把握するためには「自らが入り込み、兆候を見ながら動かなければいけない」と思い、方向性を変えました。今後も「模倣品1%以下」を保てるように取り組んでいきたいです。
草野氏:今後はどのように対策をしていくか。
河野氏:私達からすると「どれが本物か」という判断は、全くできないです。しかし、「模倣品を撲滅したい」という気持ちは強くあるため、公共機関との連携やユニオンさんのような権利者団体と協力し、模倣品の情報を得るなどとできることを確実にしていきたいと思います。
2年ほど前に多くのブランドさんと「模倣品撲滅」について話しても「そうですね」と言われるだけで、実際に一緒に取り組んでいるブランドさんは、まだ100店舗くらいでした。その2年間で「皆さんと共に」とお話したところ、1月末時点で1,000店舗を超えるブランドさんが模倣品の診断をして、撲滅運動をする所まで来ています。間違えなく、今後ECは伸びて行くと思います。だからこそ、模倣品を撲滅しなければいけません。
草野氏:消費者に意識して欲しい点を教えてください。
河野氏:私もお願いしたいことは「声を上げる」ことです。サイトには、レビューというものがあり、簡単に書き込むことができます。そのレビューは、私達が注意深く見ています。そのため、レビューに書き込んだり、コールセンターに連絡したりなどのアクションを取らないと「次の被害者が出てしまう」ということを頭に入れて、模倣品の撲滅運動に協力して頂きたいです。
何か声が上がらないと動くことができないことが正直な所です。弊社ではモニタリングをしていますが、それこそユーザーの声があってからであるため、ぜひ声を上げて欲しいです。
自分にできることを勇気を持ってしよう!
模倣品や海賊版の言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。だが、自分がそれを購入する可能性があることを知らない。インターネットショッピングが当たり前になりつつある現代だからこそ、これらのことを考えなければいけない。特にインターネットショッピングは、相手の顔が見えない。実際に自分の足で店舗に行き、商品を購入すると安心感を得ることができるが、インターネットショッピングだと商品が届くまで心配である。それが、模倣品の場合は商品すら届かないことがある。
不安が募る一方になるが、勇気を持って行動することが大切である。何かおかしいことがあった場合は、すぐにでも店舗に問い合わせをしたり、コールセンターに相談をしたりとできることはいくつかある。それをいち早く行動することが、模倣品の撲滅運動に繋がる。新たな被害者を出さないためにも、不安に打ち勝って確実に行動することが大切だ。
今回のディスカッションにより、自分が模倣品を購入する可能性があることを認識し、商品を購入する際には、今回学んだことを生かしたい。さらに、模倣品を購入してしまう人を出さないためにも、学んだことを周りに伝えながら模倣品撲滅運動に協力していきたい。